整理コーディネーターとしては、遺品整理と不用品整理、この両面の整理に熟知しておかねばなりません。
物を片付けることは、人手があって処分する手段があれば、誰でもできます。
しかしそれは健常者に限ったことであり、片付けたいと思っても、どうすることもできない高齢者が増えている現実は見落とすことができません。
ほっとけない!現実がそこにはあるのです。
都内のとある都営住宅。
3Kの部屋に、40年間住んでいる男性がいました。
お歳は75歳。
5年前に妻に先立たれ、生活が変わってしまいました。
妻がいない寂しさを、猫を飼育することで穴埋めしようと、ペット飼育が禁止されているにもかかわらず、一匹の子猫を飼い始めました。
いつしか猫は5匹に増えて、室内は猫臭が蔓延。
猫臭は、表現しにくい臭いです。
私の臭覚からすると、もっとも嫌な臭いであると言えます。
近隣の入居者からはクレームが出るのですが、本人は右から左に聞き流していました。
もちろん、室内は猫による汚れだけではありません。
長年掃除をしていない状態ですから、埃はたまり、生ものはじめ不用品が山のように積みあがっています。
そのような不衛生な環境での生活は、精神とともに体にも異常をきたします。
男性は病気となり、相談を受けたケアマネージャーやヘルパーさんは、介護をしたくても部屋の中へはいることができません。
今回男性は、強制的に入院させられて、その間に部屋を片付けることになりました。
家財の全てに猫の臭いが染み込み、抜け毛や埃がたまりにたまっています。箪笥の後ろには、子猫の死骸もあります。
このような現場の場合は、特殊作業扱いになるのですが、ケアマネージャーの方やヘルパーさんも我々と一緒に片付けの手伝いをされていますから、通常作業料金扱いにして、作業を進めました。
もちろん畳などは新調しなければ使い物になりません。
不用品の量は、14㎥。これは2t車と1t車を配車させなければ収まらない物量です。
当日のスタッフは5名。配車費、資材梱包費、清掃料金を含めて10万円。不用品を処分するのにかかる撤去費用は13万円。畳は実費扱いで、14万円。もちろん室内の消毒代金や消臭代金は、男性の預金を考え合わせるといただくわけにはいきません。特別サービスとして、片付け料金は、23万円となりました。
今までの日本では考えられないこのような現実が、急激に増えています。
日本人の寿命が延びたことは、良いことのように見えますが、反面で高齢者にまつわる悪いことが増えているのです。
制度を作る側は高齢者ではなく、もっと若い世代が考え構築しています。
高齢者の苦しみを体感することなく、現象だけをつかまえて頭で考えたシステムを作り上げます。その為に、現状に合わない制度も多く見られるわけで、制度の落とし穴にはまった高齢者が益々増えていきます。
あんしんネットでは、現場の状況を踏まえて、今後とも問題点は提起させていただき、現実の問題を直視して解決の努力を続けていきます。
このブログでも、実際の現場を紹介しつつ、どこに問題の本質があるかを紐解いていきたいものです。