やっと涼しい日々となり、毎日の現場作業も肉体的に楽な好季節となりました。
私は4日連続の講演となり、現場へは出ることができずに、空いた時間で見積もりに飛び回っていました。
つい先日の話です。突然、1本の電話が私の携帯に入りました。
携帯のメモリー登録をしているお客様の名前が表示されたので、「ああ、あの方だ」と思いつつ、電話にでました。
今から1年数か月前に、妹様が居室で倒れて亡くなり、そこの遺品整理を依頼された方でした。
お客様の電話番号を登録するケースとしては、一つは遺品整理の「生前見積もり」をされた方。もう一つは、現場がかなり困難な時に、頻繁にやり取りをしなければいけない場合などで、そういった場合もお客様の電話番号を登録します。
今回は、後のケースのお客様でした。
現場は、2日間にわたり作業を行ない、その後、相続の問題もありましたから、貴重品の類(段ボールで数箱)を半年間ほど会社の保管室で預かり、色々とやり取りがありました。
無事に相続問題も解決して、保管していた貴重品も配送を完了して、良かったと思っていたので、電話がかかった時は、「何があったんだろうか」と、疑問がわいたものです。
「その節は、本当に色々とお世話になりました」と、御礼の言葉からはじまり、近況報告をいただきました。
全てが片付き、精神的にも落ち着かれたご様子に安堵しましたが、その後に、
「母がぜひともお礼に伺いたいと言っていますから、日程調整願いますか」という言葉が続きました。
電話や手紙で十分にお礼の言葉をいただいていましたから、「大丈夫ですよ」と、お応えしたのですが、どうしても会ってお礼を、との言葉に、会社に来ていただく運びとなりました。
昨日、お母様とお客様とお姉様が来社されました。
お母様は、開口一番、「ありがとうございました、ありがとうございました」と涙ながらに、しきりと頭を下げるばかりです。
「自分たちでやらなければならないところを、気が動転して、何をどうしていいのかが分からない中、適切なアドバイスと細やかな作業をやっていただき・・・・」と、言葉を声を続けることができないご様子。
お母様は、今回の悲劇の後に、ご主人が癌が発症し入院されて、さらにその半年後、ご主人の葬儀を営むこととなりました。
自分の娘の死と配偶者の死、2人の大切な人とのお別れに、精神的にも苦しい時であったことが伺えます。
そして半年後、やっと気持ちの整理がつかれたとのことで、その時になって、娘様の遺品整理をおこなった私たちのもとへ、一つの区切りとして御礼を申し述べたいと考えられたようです。
私たち「遺品整理人」は、仕事をする中で多くの「ありがとうございます」という言葉をたくさんいただます。それは嬉しいことなのですが、その場でいただく言葉とは別に、お手紙やはがきでの礼状をいただくことは、それ以上に嬉しいものです。
遺品整理人にとっては、一つの勲章とも言えるものです。
若いスタッフには良く言うのですが、「お客様から手紙やはがきで御礼の言葉がいただけるようになったら一人前だ」と。
それも仕事的にもらうのではなく、お客様の心の整理がついたという言葉が記されているならば、なおさら嬉しいものです。
そして今回は、来社しての挨拶。
お母様と話をする中で、そのお顔を拝すると、安らかな表情から「心の整理」が無事についているなと、確信できました。
私たちの遺品整理は、ご遺族の心の整理まで行わなければいけません。
それができてこその専門業者と言えます。
社内で行なわれる全体朝礼で、今回の件は発表されましてが、どの社員にとっても共通して嬉しい気持ちとなれます。
今、社会には多くの遺品整理会社が存在しています。
全ての会社が、とは言いませんが、遺品整理の本来持つ意味や意義を考えずに、営利に走る傾向があるようです。
料金体系も明確にせずに、相手に応じて値段を変えるところもあります。
どうか「遺品整理人」の人としての質を、ぜひ量りにかけていただきたいものです。
早いもので10月もあと数日で終わります。
11月は、30日の内に20会場を回り講演活動となります。
あまり現場を構えることができませんが、若手スタッフがそれを補ってくれています。
温かい言葉をいただき、新たな気持ちでのぞみたいものです。