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拝啓 遺品整理人殿

この度は、私の部屋を整理していただき、心より御礼申し上げます。
私が生を受けて何年たったのでしょうか。
すでに帰らぬ身となり、これまでいた元の世界へと旅立ちました。
私がこれまで何をしていたかは、遺品を手にするあなた様にはおわかりかと思います。
できれば、それらの品々から、最期の私の想いをくみとっていただければ幸いです。
汚い部屋だと自分でも感じておりますが、何分わたし自身で片づけることはできませんので、宜しくお願いいたします。
                                                    敬具
 

*** はじめに ***

「遺品整理」。
それは亡くなった人の家財、すなわち遺品を、こと細かに整理していく作業を言います。
本来なら、残された家族が故人を偲びながら、時間をかけて行うものです。
私たちの日本では、「形見分け」と称して、特定の日時を設けて家族や親族が集い、遺品となってしまった品々を整理してきました。
しかし、戦後の日本では、核家族が進み、さらには少子化、高齢化や独居世帯の増加に伴って、遺品整理を業者に頼らなければならない状況となってきたのです。
平成の御代となり、ビジネスチャンスととらえる企業も出て、今では「遺品整理」という言葉が、広く認知されはじめましたが、その現場の実態は、まだまだ明らかにされていません。
そこで、私の実際に体験した現場をもとに、私たち遺品整理に携わるスタッフの思い、さらにはすでに亡くなられた方の思いを、手紙で綴っていきます。

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